ネット上の情報やSNSの雑談では、「モルワイデ図法は面積が正しいから、メルカトル図法より優れた完璧な地図である」といった極端な言説が散見されます。しかし、これは地図学における大きな誤解です。
球体の表面を裂いたり縮めたりせずに完全な平面へ展開することは数学的に不可能です。そのため、地図投影法は常に「面積」「角度(形状)」「方位(距離)」のどれかを優先し、どれかを犠牲にするトレードオフの関係にあります。
モルワイデ図法が面積の正確性を100%保証する代償として切り捨てているのが、「局所的な形状の正確さ(正角性)」と「方位の直線性」です。特に中央経線から遠く離れた東西の周縁部(日本を含む東アジアや南アメリカ南端など)では、大陸が斜め方向に強く引っ張られる「剪断(せんだん)変形」が顕著に現れます。地図の端に行けば行くほど、国や大陸の輪郭は実際の地球儀とは似ても似つかない形に引き伸ばされているのです。
「面積が正しい=形も正しい」と錯覚してしまうと、周縁部にある国家の輪郭や海岸線の正確な把握を見誤る原因になります。この歪みの特性を把握して地図を読むことこそが、現代のリテラシーと言えます。