その思想がもっとも鋭利な形で結実したのが、アルバム『miss you』だ。過飾なオーケストレーションや巨大なシンセサイザーの壁を取り払い、アコースティックギターの弦の擦れる音や、息づかいまでを克明に刻み込んだ作風は、聴衆に強い衝撃を与えた。
アリーナクラスの動員力を誇りながら、あえてホールツアーを中心に回るという贅沢な選択。自らのヴォーカルをむき出しにし、時に生々しい苦悩や哀愁を歌い上げる姿は、J-POPの王者としての慢心など微塵もないことを物語る。50代を迎えた桜井和寿が選んだのは、過去の成功体験のトレースではなく、自らの限界を削り出すような表現の探求だった。