リドリー・スコット監督の不朽の名作『ブレードランナー』が描いた退廃的な未来都市。そのビジュアルの根底に、歌舞伎町の路地裏やアジアの雑踏があったことは広く知られている。降りしきる酸性雨、ネオンサインの反射、屋台から立ち上る湯気。ハイテクな巨大建築の足元に広がるローテクな混沌という対比は、まさにサイバーパンクの原点となった。
アニメーション監督の押井守は、この構造をさらに先鋭化させ、緻密な都市景観として再構築した。『攻殻機動隊』に見られる迷宮のような水路と入り組んだ路地は、電脳空間のネットワークと見事な二重写しになっている。最先端のテクノロジーと古びたコンクリートの小道が同居する特異な風景は、日本固有の空間美学として世界の視覚表現に決定的な影響を与え続けている。