本作を語る上で欠かせないのが、監督マリオ・ソルダーティの卓越した美学だ。彼が牽引した「カリグラフィズモ(形式主義)」と呼ばれる潮流は、プロパガンダ映画が横行した暗黒期において、あえて徹底した様式美と文学的格調のなかに芸術家の誇りを封じ込めた。
当時のイタリア映画界において、精緻な美術セットと光の陰影にこだわった重厚な文芸映画を創出することは、体制に対する静かなる抵抗そのものだった。単なる歴史ドラマの枠組みにとどまらず、画面の隅々にまで張り巡らされた映像美の追求は、のちのネオレアリズモへと繋がる重要な架け橋となったのである。