消費者が最も熱い視線を注ぐ疑問が、「果たしてランチ代の元を取ることは可能なのか」という損益分岐点の実態です。食品流通の現場データおよび外食産業関係者への取材をもとに、明太子食べ放題のシミュレーションを行いました。
まず押さえるべきは、提供される明太子の仕入れ原価です。贈答用の美しい「一本物」は仕入れ値が高価ですが、食べ放題で主に使用されるのは製造過程で皮が破れた「切れ子(きれこ)」や「バラ子」です。味や鮮度、調味だれの質は特級品と同等でありながら、仕入れ相場は1キログラムあたり2,200円〜3,200円前後(100gあたり約220円〜320円)で推移しています。明太子1本の平均重量を約40グラムと仮定すると、1本あたりの原価はおよそ88円〜128円です。
定食のメインディッシュ(鶏の唐揚げや生姜焼きなど)、ご飯、味噌汁などの基本原価(約350〜450円)を考慮すると、「食材原価率を一般的な外食の目安である30〜35%以上に引き上げる」という意味での元取れラインは、明太子約3本(120g程度)となります。
「それなら簡単に元が取れるのではないか」と思われがちですが、ここに外食ビジネスの緻密な設計が存在します。辛子明太子は塩分とカプサイシンが凝縮されているため、単体で大量に食べ続けることは味覚の構造上極めて困難です。利用者は自然と白米(原価が比較的安価な炭水化物)を大量にかき込むことになり、結果として胃袋の許容量は早期に限界を迎えます。店舗側は、からし高菜の酸味や出汁による味変を提供しつつも、見事なバランスで全体の原価率を適正範囲内に着地させているのです。