球場を舞うボールの回転数や変化量、果ては打撃におけるバットのスイングスピードまでが数値化される2026年の野球界。一見すると、数字に頼り切った現代野球はかつての経験則を過去のものにしたようにも思える。だが、古田の考え方は本質的に異なる。データは判断を狂わせるためのノイズではなく、人間の観察力を研ぎ澄ませるための武器だというスタンスだ。
野村克也氏のもとで叩き込まれた「相手の心理を読む配球」は、単なるデータの暗記ではなかった。カウントや点差、打者の表情や足の位置から「次の一球」を導き出す観察眼。トラッキング機器が吐き出す無機質な数字に「人間の生々しい心理」をどう掛け合わせるかという課題に対して、古田が示す回答は、デジタル全盛の現代においてこそ決定的な意味を持つ。