監督に抜擢されたのは、人間の底知れぬ業とリアルな情念を描き続けてきた鬼才・吉田恵輔だ。彼が今回カメラを向けるのは、単なる事件の表層をなぞるスクープ記事のような安易な娯楽作ではない。緻密な取材と現場検証を重ねて再構築された、重厚なヒューマンドラマとしての実像である。
吉田監督は本作について、周囲のスタッフに「誰が被害者で、誰が加害者なのかの境界線すら曖昧になるような極限の心理状態を描く」と語ったという。息を詰まらせるような緊迫感が画面全体を支配するサスペンス・スリラーの形式を取りながらも、根底に流れるのは孤独な男の生き様だ。映画産業の第一線で戦うクリエイターたちが一目置く吉田の演出は、観客の倫理観を激しく揺さぶるに違いない。