SNSのショート動画や旅行トレンドにおいて、なぜ大須の存在感が際立っているのか。その核心には、半径約1キロメートル圏内に約1,200店舗がひしめくアーケード空間の「圧倒的な回遊密度」があります。大須通、若宮大通、伏見通、南大津通に囲まれた街区は、天候に左右されないアーケードで結ばれ、歩くだけで視覚・嗅覚・聴覚を刺激する情報量の多さを誇ります。
大須の歴史を紐解けば、1612年の名古屋開府に伴う大須観音の移転から始まり、近代以降は芝居小屋や活動写真館が集まるエンタメ街として栄えました。戦後の焦土から復興したのち、1970年代から80年代にかけては電子パーツやアマチュア無線を扱う電気街へと変貌。さらに1990年代以降は古着やインポートカルチャー、2000年代以降はメイドカフェをはじめとする大須サブカルチャーの拠点へと、街の本質を変質させずに時代の流行を「接ぎ木」してきました。
2026年の現在、全国の地方商店街がシャッター通り化や均質化に苦しむなか、大須が独立資本の個人店比率を約80%以上維持している点は驚異的です。大手チェーンの画一的な看板に埋め尽くされることなく、若手起業家による実験的なポップアップストアや老舗和菓子店、海外直輸入のストリートショップが隣り合わせで共存する景観が、タイパや予測可能性を嫌う若い世代や訪日客に「偶発的な出会い」を提供しています。