「串打ち三年、裂き八年、焼きは一生」。そんな言葉が日本の厨房には深く根付いている。この店で腕を振るううなぎ職人は、炭火のわずかな爆ぜ具合や鰻の身の弾力を指先一つで見極める。
東京の伝統を色濃く反映した江戸前蒲焼は、背開きにした鰻を強火で素焼きし、じっくりと蒸し上げて余分な脂を落とす。その上で、秘伝のタレに潜らせて幾重にも焼き色をつけていく。蒸しの工程が少しでも狂えば、身は崩れるか固さを残してしまう。蒸籠から上がった鰻は、箸を入れた瞬間に抵抗なくほぐれるほど柔らかい。
炭火から立ち上る煙を巧みに操り、外皮は香ばしくパリッと、身は羽毛のようにふんわりと焼き上げる。職人の掌が熱を測り、団扇が風を送り込む。その一連の所作には一切の無駄がなく、見惚れるほどの緊張感が漂う。