現代の文化財修復は、かつてのように塗料を塗り重ねるのではなく、過去の修復跡を取り除き、制作当時の素肌を蘇らせる作業が主流となっている。最新のレーザー洗浄技術やデジタル顕微鏡の導入により、ミケランジェロの制作プロセスの生の息遣いが蘇ってきた。
大理石の表面に残されたノミの痕跡からは、彼がどの角度からノミを打ち込み、どの程度の速度で石を彫り進めたかが分かっている。未完成のまま残された彫刻などを鑑賞する際は、石の中から彫像を解き放つかのように削り出した荒々しいタッチに注目したい。完璧に磨き上げられた完成作とはまた異なる、彫刻家と石との激しい格闘の痕跡が、そこには刻まれている。