米津玄師のキャリアを語る上で欠かせないのが、ボカロP「ハチ」としての活動実績だ。ニコニコ動画を中心に数々の名曲を生み出していた当時、彼は自らの姿をグラフィックやイラストの背後に隠し、完全な覆面クリエイターとして活動していた。やがて本名名義で自ら歌唱を始め、邦楽シーンへと足を踏み入れた初期段階でも、長い前髪で目元を完全に覆い隠すスタイルを貫いていた。
なぜ彼は顔を隠していたのか。当時のインタビューや関係者の証言を紐解くと、そこには「音楽そのものをフラットに聴いてほしい」という強い美学と、自己のビジュアルに対する独自の羞恥心やこだわりが存在していたことがうかがえる。顔の半分以上を影で覆うシルエットは、どこか浮世離れした孤独感を漂わせ、当時のアンダーグラウンドな楽曲世界観と完璧に合致していた。