この文化的地殻変動を語るうえで外せないのが、映像メディアによる意識改革だ。特に世界的なストリーミング巨大プラットフォームであるNetflixを通じて配信された人気番組『アグリー・デリシャス: 極上の味覚』の存在感は圧倒的だった。
優れたフードドキュメンタリーは、単に美味しそうな料理を映し出すだけではない。食の背景にある歴史や偏見、文化の尊厳を真っ正面から描き出す。同番組は、欧米中心主義的な「正しいテーブルマナー」という固定観念を心地よく打ち砕き、アジア各地の食道具である箸が持つ機能美や文化的価値を大衆レベルへと広める強力な触媒となった。画面越しに映し出される湯気立つ料理と、それを器用に箸で楽しむ人々の姿は、視聴者の「箸を使ってみたい」という好奇心を猛烈に刺激したのだ。