スタジオジブリの不朽の名作『もののけ姫』(1997年公開)では、夜の森を歩く透き通った巨大な姿として「デイダラボッチ」が登場する。昼は鹿に似た顔を持つ神「シシ神」であり、夜になると青く輝くデイダラボッチへと変容する設定は、世界中に強烈なインパクトを与えた。
民俗伝承における本来のでえたらぼっちと、映画におけるシシ神/デイダラボッチには明確な相違点と意図的な再解釈が存在する。
各地の民話に登場するでえたらぼっちは、基本的に「泥臭い土木神・地形造成者」であり、どこか呑気で人間味のあるキャラクターとして描かれることが多い。人間を直接害することは少なく、山を運んだり井戸を掘る手助けをしたりする身近な巨人像がベースとなっている。
宮崎駿監督は、この土着の巨人伝承を「生命の生と死を司る根源的な自然神」へと昇華させた。映画内のシシ神は一歩歩くごとに草木を生やし、同時に命を奪う絶対的な存在である。夜の姿であるデイダラボッチは星々を見上げて歩く宇宙的な神秘性を帯びており、首を切り落とされた際に吹き出す黒い体液は大地を飲み込む圧倒的な破壊神として描写された。
土木的な巨人という土着の民話を、アニミズム(精霊信仰)の頂点に立つ神聖な概念へと再構築したことで、『もののけ姫』は古典伝承に新たな生命を吹き込み、現代の巨人像を決定づけた。