若者たちがこの場所に押し寄せる理由は、単に財布に優しいからではない。手書きの黄色いメニュー札、油の馴染んだ木目調のテーブル、壁に掛けられた古びたカレンダー。計算し尽くされたコンセプトカフェには決して作れない、本物の時間の積層がそこには佇んでいる。
「スマホの通知に追われる日々の中で、ここに来ると不思議と心が落ち着くんです」。そう語るのは、都内の大学に通う20代の女性だ。タイパやタイトなスケジュールに縛られる現代人にとって、手作りの味を噛み締めながら無為に過ごす数十分間こそ、最高の贅沢なのかもしれない。