「縦に裂けるキノコは食べられる」「毒キノコは色が派手で、地味な色のものは安全」「虫が食っているキノコは人間も食べられる」――こうした昔からの言い伝えを信じていないだろうか。結論から言えば、これらはすべて科学的根拠のない恐ろしい迷信だ。
国立科学博物館の植物研究部で菌類を長年研究している保坂智之氏は、これらの俗説が毎年のように犠牲者を生み出していると強く指摘する。ドクツルタケをはじめとする猛毒種も綺麗に縦に裂けるし、派手どころか地味で白く静かな佇まいの猛毒菌は無数に存在する。ナメクジや虫は人間とは解毒代謝系が異なるため、昆虫にとって無害でも人間には致死的となる成分が多いのだ。
日本菌学会も公式Webサイトなどでこうした誤った言説への注意を促している。菌類学・自然科学の知見によれば、キノコの外形は生育環境の湿度、日照、発生時期によって著しく変化する。図鑑の写真と目の前の実物が微妙に異なるのは当たり前なのだ。保坂氏は「100%の確信が持てない限り、野外のキノコは口に入れるべきではない」と繰り返し警鐘を鳴らす。