ふたりの歩みを語る上で外せないのが、昭和の文学界・劇界を揺るがした異才・三島由紀夫の存在である。美輪の類稀なる美貌と演技力に深く傾倒した三島は、彼女のために戯曲を執筆するなど、その才能を極限まで引き出した。とりわけ自伝的作品とも言える名作『毛皮のマリー』は、アバンギャルドかつ圧倒的な美学で観客を熱狂させた。
黒柳もまた、劇団客演や海外留学を通じて舞台演劇の可能性を追求し続けていた。劇場という濃密な空間で観客と対峙し、命を削るようにして役を生きる凄み。ふたりはテレビという広範なメディアで活動しながらも、根底では演劇という本物の表現空間に対する情熱を共有していた。三島をはじめとする当時の第一線の表現者たちと過ごした時間は、ふたりの美意識をさらに強固なものへと昇華させたのである。