このバーを語る上で避けて通れないのが、1964年に公開された映画『007 ゴールドフィンガー』との運命的な系譜だ。作家イアン・フレミングが生み出したダンディズムとスリルに満ちた世界観は、名優ショーン・コネリーの圧倒的な存在感によってスクリーンに焼き付けられた。当時、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーやEONプロダクションズが世に送り出した映像美は、世界中のライフスタイルやバーカルチャーに決定的な影響を与えた。
創業時のオーナーは、熱狂的なシネマコレクターであり、映画の制作陣やキャストとも個人的な親交を持っていた人物だったと伝えられている。映画のセットデザインを意識した金箔のアクセントや、劇中の象徴的なシーンを彷彿とさせるライティングは、当時の映画関係者たちが夜な夜な集まり、次回作の構想を語り合うためのサロンとして設計された名残だ。門外不出とされてきた当時のゲストブックには、映画史を飾るビッグネームのサインが今も大切に保管されている。