マスオさんが劇中で最もリアルに動揺し、素の表情を覗かせるのが、海山商事の同僚であるアナゴさんとのやり取りです。若本規夫さんの重厚かつ個性あふれる声で演じられるアナゴさんは、マスオさんを夜の酒場や麻雀、時にはキャバクラへと誘い出すトラブルメーカーでもあります。
「おいマスオ、一杯引っ掛けていこうじゃないか」「サザエさんには残業だって言えばいいのさ」と持ちかけるアナゴさんに対し、マスオさんは「えっ、でもサザエが怖いし…」「嘘をつくのはまずいよ」と本気でうろたえます。恐妻家同士の連帯感と、サザエへの罪悪感に板挟みになる瞬間こそ、マスオさんのリアクションが最も生き生きと輝く名場面です。
磯野家の中では完璧な好青年を演じているマスオさんが、アナゴさんの前でだけ見せるサラリーマンとしての弱音やドギマギ感。これこそが、視聴者が共感せずにはいられない人間味の源泉となっています。