生殖器周辺を確認する以前に、猫の被毛のカラーパターン自体が性別を雄弁に物語っているケースがあります。代表的な現象が「三毛猫」と「茶トラ猫」における極端な性別の偏りです。
遺伝学の観点から三毛猫のオスが希少な理由を紐解くと、毛色を決定づける遺伝子と性染色体の組み合わせに行き着きます。猫の毛色を茶色(オレンジ)にする「O遺伝子」は、性染色体のうち「X染色体」の上にしか存在しません。白・黒・茶の3色が同時に発現するためには、黒を発現させる遺伝子と、茶を発現させるO遺伝子をそれぞれ載せた2本のX染色体(XX)が不可欠です。
通常のオスは染色体が「XY」であるため、茶色か黒色のどちらか一方しか持つことができず、三毛猫は原理的にメス(XX)しか誕生しません。しかし、染色体異常によって「XXY」という核型を持つ個体がごく稀に誕生します(ヒトにおけるクラインフェルター症候群に相当)。この異常発生確率はおよそ3万分の1と算出されており、古くから航海の守り神や幸運の象徴として珍重されてきた歴史的背景を持ちます。
一方、茶トラ猫にオスが多い理由も同一のメカニズムによって説明されます。オス(XY)の場合、母親から受け継いだ1本のX染色体にO遺伝子が存在するだけで、完全に茶トラの毛色を発現します。しかしメス(XX)の場合、両親媒のX染色体双方にO遺伝子が揃わなければ純粋な茶トラにはならず、片方だけでは三毛猫やサビ猫になってしまいます。統計データ上、茶トラ猫全体の約75〜80%がオスで占められており、茶トラ柄を見かけた時点でオスである確率が極めて高いといえます。