なぜ毛色が性格に影響を及ぼすのか。その鍵を握るのが、動物行動学とメラニン遺伝学の融合領域だ。胚発生の段階において、皮膚のメラノサイト(色素細胞)と中枢神経系の神経細胞は、同じ「神経稜細胞(しんけいりょうさいぼう)」と呼ばれる細胞群から分岐して生成される。つまり、毛色を決定づけるメラニン色素の代謝ルートと、ドーパミンやノロアドレナリンといった神経伝達物質の合成経路は、化学的に同一のスタートラインを共有しているのだ。
ここで重要な役割を果たすのが、野性的なタビー模様(縞模様)を作るアグーチ遺伝子である。アグーチ信号タンパク質はメラニン受容体に作用して毛色を変色させるだけでなく、脳内の受容体にも働きかけ、警戒心や狩猟本能、恐怖反応の閾値を変化させる。古来の毛色であるキジトラが高い野生残存率と強い警戒心を見せる一方、メラニン生成が変化した変種では神経伝達物質の分泌バランスが異なり、人間に対して穏やかで懐きやすい性質が現れやすくなる。