犬が暑いときにハァハァと舌を出す「パンティング」は日常的ですが、猫における口呼吸は生理現象ではありません。猫は本来、完全な「鼻呼吸動物」です。猫が口を開けて呼吸している(開口呼吸)原因の9割以上は、体内の酸素交換が破綻し、生命維持が限界に達しているサインと捉えるべきです。
肺水腫に陥ると、空気を取り込むべき肺胞が漏出液で満たされ、どれだけ息を吸っても血液中に酸素を取り込めなくなります。これにより猫はパニックに陥り、首を伸ばして前足を突っ張り、胸郭とお腹を大きくペコペコと動かす「起坐呼吸(きざこきゅう)」をとるようになります。チアノーゼによって舌や歯茎が紫色に変色している場合、残された時間は極めてわずかです。
見逃してはならないのが、日常に潜む猫の呼吸数の正常値と異常の境界線です。動物病院の診察室では緊張から呼吸が速くなるため、自宅で完全に脱力して眠っているときの「睡眠時呼吸数(SRR: Sleeping Respiratory Rate)」が世界的なゴールドスタンダードの指標となっています。
健康な猫の睡眠時呼吸数は1分間に15〜25回程度です。これが継続して30回を超えてきたら警戒段階、40回を超えている場合はいつ肺水腫を発症してもおかしくない危機的状態と判断されます。胸が1回膨らんで縮むのを「1回」と数え、スマートフォンのタイマーで30秒測って2倍にする習慣が、愛猫の命を拾い上げる最初の防波堤となります。