猫エイズに対する誤解の多くは、その感染経路に関する無知から生じている。結論から言えば、このウイルスは極めて脆弱だ。空気感染や飛沫感染を起こすことはなく、同じ部屋で暮らしていたり、食器を共有したりする程度で感染が広がる確率はきわめて低い。
主たる感染ルートは、血が出るような激しい喧嘩による「深い噛み傷」である。ウイルスは唾液中に大量に分泌されるため、相手の皮膚を突き破るほどの強い咬傷を通じて相手の血液中に直接侵入する。未去勢の雄猫が縄張り争いで争う野外環境こそが、感染拡散の最大の温床だ。
公益社団法人日本獣医師会が公表する飼育実態データや各種調査でも、完全室内飼育の徹底が感染リスクを劇的に低下させることが示されている。なお、類似した名称を持つ猫白血病ウイルス感染症(FeLV)は、毛づくろいや食器の共有でも感染しうる強い伝播力を持つが、FIVの感染力はそれと比べればはるかに限定的だ。