「矯正ベルトを使い続けると筋力が落ちる」という噂は、医学的・運動生理学的な観点から見て半分事実であり、半分は誤解です。鍵を握るのは「依存度」と「着用時間」です。
人間の身体には、外部からの固定具に頼りすぎると自発的な筋活動を休止させてしまう適応反応(代償作用)があります。脊柱起立筋や菱形筋、腹横筋といった姿勢保持筋群は、重力に対抗して自力で収縮することで緊張を保っています。しかし、強固なステー(ボーン)や強力なゴムベルトで1日中体を締め付け続けると、脳は「自力で支える必要がない」と判断し、筋シナジー(筋肉の協調運動)が低下します。
これが「猫背矯正ベルトで筋力が落ちる真相」です。筋繊維が急速に萎縮するわけではありませんが、姿勢を支える神経筋制御が怠け、ベルトを外した際にかえって以前より姿勢が崩れやすくなる「リバウンド現象」が発生します。
また、逆効果になる最大の落とし穴が「締め付けすぎによる血行障害と呼吸の浅さ」です。強い圧迫で肋骨の可動域が制限されると、横隔膜を使った深い腹式呼吸ができず、浅い胸式呼吸に陥ります。結果として首・肩の僧帽筋が過緊張を起こし、頑固な肩こりや頭痛、自律神経の乱れを引き起こす本末転倒な事態を招くのです。