言葉の変遷を辿る上で欠かせないのが辞書の記述だ。例えば三省堂の各種辞典や『デジタル大辞泉』の定義を紐解くと、いずれも「打ち消しの語を伴って、まったく~というわけではない。それほど悪くはない」と解説されており、内面における肯定的な自己評価が示唆されている。さらに、知識共有型データベースとして知られるJapanKnowledgeで横断検索を行っても、近代文学以降、この言葉が感情の微細な揺らぎを表現する手段として重用されてきた歴史が浮かび上がる。
近代日本文学の巨匠・夏目漱石の名作『吾輩は猫である』の作中にも、人物たちの複雑な心理描写や皮肉と愛嬌を交えたやり取りの中で、この種の控えめな肯定表現が活写されている。漱石が描いた人間観察の鋭さは、現代における「まんざらでもない」の使われ方とも見事に合致しており、100年以上前から日本人が「本音をオブラートに包む術」を嗜んでいたことを物語っている。