麻生氏の洗練された筆致の原点を辿ると、日本史に名を残す名宰相であり外祖父でもある吉田茂氏の存在に行き着く。幼少期から一流の文化や美意識に囲まれて育った麻生氏は、自然と古典的な書道藝術の真髄を身体に染み込ませていった。単に字を上手に書く技術ではなく、書を通じて己の気概を示すという旧家の伝統が、その指先に受け継がれているのである。
学習院での学問や海外留学、実業家としての経験を経ながらも、日本の伝統文化に対する深い造詣は途絶えることがなかった。古今名筆の拓本に触れ、漢詩や和歌の精神を嗜む環境があったからこそ、彼の書には教科書的な形にとらわれない豊かな教養と格調の高さが自然とにじみ出ているのだ。