昭和の面影を色濃く残す飲み屋街「三角地帯」。昼下がりの薄暗い小路を歩くと、古びた木造長屋の引き戸の奥から、最新のエスプレッソマシンが立てる鋭いスチーム音が響いてくる。2026年、三軒茶屋のロースターたちが熱視線を送るのは、アナエロビック(嫌気性発酵)をはじめとする先端プロセスを経た個性豊かな生豆だ。
カウンターに置かれたグラスから立ち上るのは、まるで熟したプラムやカカオニブのような重層的な香り。店主は温度変化によって表情を変えるカップを愛おしそうに見つめながら、抽出の秒数を調整する。かつての大衆的な喫茶空間と、極限まで先鋭化したマイクロロースターの技術が、この極小空間で奇跡的な調和を見せている。