鈴木涼美氏が語る性愛論の根底にあるのは、夜の世界やジャーナリズムの現場を経験してきたからこその、冷徹かつ情熱的な人間観察です。彼女はセックスを単なる愛情表現や快楽の手段としてのみ描くのではなく、「男と女の間にある権力関係、自己承認欲求、そして埋まらない孤独の取引」として鮮やかに解剖します。
特に話題を呼んだのは、恋愛や性交渉において「相手に選ばれること」で自尊心を保とうとする女性心理の危うさと、それを消費する男性側の身勝手さを同時に告発した一連の発言です。「愛しているから身体を開くのではなく、身体を開くことでしか愛を確かめられない瞬間がある」といった、矛盾に満ちた人間の業を肯定も否定もせず提示する姿勢こそが、彼女の論考が持つ圧倒的な説得力の源泉といえます。