「イラスト」という言葉すら一般的ではなかった時代、人々を熱狂させたのは本や雑誌を彩る挿絵画(さしえが)だった。当館が所蔵する膨大なコレクションは、単なる懐古趣味にとどまらない。近代日本のグラフィックデザインや漫画表現のルーツが、緻密な筆致で描かれた1枚の紙の上に鮮やかに刻まれている。
特に圧巻なのは、高畠華宵をはじめ、抒情画の第一人者たちが手がけた少女雑誌や少年雑誌の表紙画・口絵だ。美しくしなやかな女性像、冒険心溢れる少年の瞳、そして西洋のモダン文化と和の伝統が交錯した装飾美。現代のイラストレーターや漫画家たちが影響を公言するのも納得の、圧倒的な構図力と色使いが鑑賞者の目を釘付けにする。