相撲観戦の象徴として愛される「国技館やきとり」。その製造拠点がアリーナの直下に位置している事実は、ファンの間でも意外と知られていない。関係者専用の重い扉を抜けて階段を降りると、そこには外の喧騒を遮断した無機質なクリーンルームが広がっている。
敷地面積にして数百平方メートル。大型の電気グリラーや急速冷却機、自動パッキングラインが整然と並ぶその光景は、アリーナの付帯施設というよりも高度に規格化された近代プラントそのものだ。大相撲の東京場所中ともなれば、早朝から白衣に身を包んだスタッフたちが一斉に持ち場につき、整然とした手つきで鶏肉を捌き、串を焼き網へと送り込んでいく。
徹底した温度管理と衛生基準が敷かれたこの空間で、1日に生み出される焼き鳥は約5万本。年間では数百トンもの鶏肉がここで消費される。外気と遮断された地下空間だからこそ、天候や湿度に左右されず、常に均一な焼き加減を維持できるという利点があるのだ。