組織社会学および科学技術政策の視点から理研の理事長ポストを評価した際、現代のリーダーには過去の時代とは根本的に異なる「3つの境界線(バウンダリー)の統合」が要求されています。
- 国家主権と知のオープン性の境界:先端技術の流出を防ぐ経済安全保障の徹底と、国際的な共同研究の自由をいかに両立させるか。
- 短期的な経済合理性と長期的な基礎研究の境界:5〜10年で成果を求めるスタートアップ的発想に偏重せず、30年後に花開く純粋物理・化学の土壌を死守できるか。
- 経営層と現場研究者の心理的境界:組織の流動性という美名の下で研究者の生活基盤を脅かすことなく、若手が命を懸けて探求に没頭できる心理的安全性を担保できるか。
五神体制に対する評価は、まさにこの3点の調和を任期満了までにどこまで高められるかにかかっています。単なる「予算を引っ張ってくる有能な渉外役」で終わるのか、それともSTAP以降の閉塞感を完全に払拭し、日本の基礎科学の地盤沈下を食い止めた「歴史的名リーダー」として記憶されるのか。理研の理事長という座は、科学技術立国・日本の命運そのものを背負わされた過酷な実験場と言えます。