文壇において、静謐かつ凛とした人間の尊厳を描き続けたのが直木賞作家の葉室麟だ。地方紙記者を経て50歳を過ぎてから本格的な執筆活動に入った葉室は、武士の生き様や義理人情を描いた歴史文学で読者を魅了した。
第146回直木賞を受賞した『蜩ノ記』は、役所広司や岡田准一の出演で映画化され、日本アカデミー賞を席巻した。現在もNHKオンデマンドやAmazon Prime Videoなどの主要配信プラットフォームで鑑賞可能であり、その清冽な筆致は色褪せない。葉室が描いた「己の分をわきまえ、誠実に生きる武士道」の根底には、青春時代を過ごした福岡藩校の遺風が確かに息づいていた。