彼の演技キャリアにおいて決定的な転機となったのが、1980年に公開された映画『ヒポクラテスたち』である。医学生たちの葛藤と苦悩を描いた青春群像劇の傑作であり、監督を務めた大森一樹の鋭い演出と、当時20代前半だった古尾谷雅人の瑞々しくも鬱屈した存在感が見事な化学反応を起こした。
製作を手掛けたATG(日本アート・マシアター・ギルド)の作品群の中でも、本作は屈指の評価を獲得。単なる爽やかな青春映画にとどまらず、若者が抱える時代の虚無感や焦燥感を等身大で表現した彼の佇まいは、観客の心に強く突き刺さった。スクリーンの中で見せた哀愁漂う表情は、一躍彼を時代を象徴する実力派スターへと押し上げることになる。