『はじめてのチュウ』が流れるたび、多くのリスナーが抱くのが「この声はいったい誰が歌っているのか?」という疑問です。クレジットに記された歌手名は「あんしんパパ」。まるで子どものような、あるいはマスコットキャラクターのような愛らしい歌声ですが、その正体はシンガーソングライターであり作詞・作曲家の実川俊晴(じつかわ としはる)氏です。
実川氏は1970年代からフォークグループ「マキシー」などで活躍し、その後はCMソングやアニメ劇伴、他アーティストへの楽曲提供など、日本の音楽シーンの第一線で数々の名作を世に送り出してきた実力派ミュージシャンです。本作では歌唱のみならず、作詞・作曲・編曲のすべてを自ら担当しています。
なぜ本名ではなく「あんしんパパ」という風変わりな名義を使ったのか。その背景には、大人の男性が「はじめてのチュウ」という無邪気な初恋ソングをそのまま歌うことへの照れくささや、アニメの世界観に合わせた架空のキャラクターとして提示したいという遊び心がありました。この匿名性がリスナーの想像力をかき立て、楽曲の持つミステリアスな魅力へとつながっていったのです。