ケトン食は現代のダイエットブームで生まれたものではなく、もともとは1920年代に開発された小児の難治性てんかんに対する食事療法が原点です。絶食するとてんかん発作が治まる現象に着目し、「食事を摂りながら絶食時と同じ代謝状態(ケトーシス)を作り出す方法」として医学的に確立されました。現在でも、薬物療法で十分な効果が得られない難治性てんかんの保険適用治療として世界中の医療現場で導入されています。
近年では、がん治療の補助療法としての応用研究も活発に進められています。多くの正常細胞はケトン体をエネルギーとして利用できるのに対し、がん細胞の多くはミトコンドリアの機能不全により「ブドウ糖のみを主要エネルギー源として増殖する(ワールブルク効果)」という代謝特性を持っています。
この特性を利用し、極端な糖質制限と高脂質食によってがん細胞の兵糧攻めを狙う「がんケトン食療法」が、大学病院や先進医療機関を中心に臨床研究されています。標準治療(抗がん剤や放射線治療)の奏効率向上や副作用軽減を目指す併用療法として注目を集めていますが、自己判断での治療中断や極端な食事変更は極めて危険であり、必ず主治医の指導のもとで実施されるべき医療領域です。