ポップス界の巨匠である桑田佳祐が、なぜここまで濃厚でドロドロとした情念の歌を生み出せたのか。その背景には、坂本冬美という「歌い手」に対する絶大な信頼と、歌謡曲というジャンルへの深い敬意がある。
曲中にちりばめられた言葉の節々には、ダブル・ミーニングや韻律の妙が張り巡らされている。死してなお男を忘れられない女の業を描き出す一方で、音楽産業の転換期において「本物の歌」とは何かを問いかけるかのような凄みが漂う。メロディラインも過剰な装飾を削ぎ落とし、言葉の一つひとつが刺さるように緻密に設計されているのだ。