吉野家の挑戦は、外食産業全体のパワーバランスを大きく揺るがした。それまで居酒屋業界の独壇場だった夜の市場へ、ファストフード業界が鮮やかに切り込んだのだ。その中心にあったのが「ちょい飲み」という新しいライフスタイルの定着である。
お通し代(席料)がない。注文から提供までの時間が極めて短い。そして何より、1杯と2品で千円前後に収まる明朗会計。昔ながらの大衆酒場が持つ人情味や気軽さを、無駄のないシステムの中に落とし込んだ。同僚と長居して愚痴をこぼす従来の飲み会から、ひとりでサクッと1日の疲れをリセットするスマートな飲み方へ。人々の時間の使い方の変化を見事に捉えた戦略だった。