患者が術前に最も恐れるのが、身体にメスを入れないとはいえ血管に異物を入れる「痛みの度合い」です。臨床現場および患者の体験談を精査すると、カテーテル手術痛みと麻酔に関しては「手術中」よりも「術後」に特有の苦痛が集中している実態が浮かび上がります。
実際の手術では、穿刺を行う手首や太ももの皮膚に局所麻酔を施すため、血管内にカテーテルが進入する瞬間に鋭い痛みを感じることはほぼありません。血管の内壁には痛覚神経が存在しないため、管が身体の中を移動する感覚自体は無痛、あるいは「何かが通っているような鈍い違和感」にとどまります。ただし、心臓の冠動脈内でバルーンを拡張して血流を一瞬遮断する瞬間には、狭心症発作に似た特有の胸の圧迫感や息苦しさを訴える患者が少なくありません。
一方、手術経験者の多くが「術中で一番辛かった」と口を揃えるのが、術後安静時間の真相です。太ももの太い動脈(大腿動脈)からカテーテルを挿入した場合、術後の大出血を防ぐために専用の止血器具や用手圧迫を行い、脚を一切曲げずにベッド上で仰向けになったまま4〜6時間以上の絶対安静を強いられます。寝返りすら打てないこの拘束時間は、極度の腰痛や排泄の不自由さを伴い、患者の精神的・肉体的負担として非常に重いハードルとなっています。現在では手首の動脈(檮骨動脈)からの穿刺が主流化し、術後すぐに歩行可能なケースが増えているものの、穿刺部位に応じた事前の覚悟が必要です。