公開前から映画関係者の間で「本命中の本命」と囁かれていた映画『カラスの行水』。スクリーンに描き出されるのは、一見すると穏やかな日常の陰に潜む、人間の底知れぬ業と秘密だ。
タイトルの象徴する「表面上の浅い関わり」や「短時間で過ぎ去る過ち」が物語の通底音となっている。是枝裕和監督ならではの静けさの中に潜む濃密なヒューマンドラマでありながら、一瞬たりとも目が離せない緊迫したサスペンスへと変貌を遂げる構成は見事というほかない。大手配給会社・東宝の全面バックアップのもと制作された本作は、停滞感が漂う昨今の映画産業全体に強烈なインパクトを与えている。