帝が劇中で残したセリフは、どれも短いながらも圧倒的な自己中心性を孕んでおり、視聴者の記憶に深く刻まれています。
「そなたが私のものになれば、望むものは何でも手に入る」「私に抱かれるのを嫌がる女などおらぬ」といった言葉は、他者の感情を想像する能力が完全に欠落した権力者の哀しい肖像を映し出しています。周囲から傅かれ、何不自由なく育てられた結果、他者を「自分の所有物」としてしか認識できなくなってしまった男の限界がそこにあります。
滑稽で気持ち悪く、けれどどこか哀れでもある――この多層的な感情を観客に抱かせる点にこそ、高畑勲というアニメーション作家の恐ろしいまでの人間観察眼が光っています。