『軍師官兵衛』を巡り、インターネット上でしばしば議論となるのが「後半の官兵衛が冷酷すぎるのではないか」「秀吉を裏で操る悪人に描かれていたのではないか」というキャラクター解釈に関する疑問です。
しかし、脚本を担当した前川洋一や制作陣が意図したのは、単純な善悪二元論の打破でした。戦国乱世を終わらせるためには、きれいごとだけでは生き残れないという「武将たちの冷徹な生存戦略」を赤裸々に描くことこそが本作の根幹にありました。
心理学的な観点から分析すると、信じた主君・秀吉が権力の亡者へと堕ちていく過程で、官兵衛が抱いた「失望」と「自らの手で天下を平定しなければならないという使命感」の葛藤が、外見上の冷酷さとして表出していました。秀吉から「次に天下を取るのは官兵衛である」と恐れられ、遠ざけられていく心理的孤立を、岡田准一は静謐な佇まいと鋭利な視線で表現。ネット上で議論が巻き起こったこと自体が、視聴者がドラマの人間ドラマに深く没入していた証左と言えます。