インターネット上で話題を呼ぶ「音当てテスト」を試した際、全問正解して「自分には特別な才能があるのでは」と胸を躍らせた経験を持つ人は少なくありません。しかし、現場の音楽教育者や聴覚研究者の視点から見ると、その大半は絶対音感と相対音感の違いを混同したことによる勘違いです。
両者の決定的な差は、「基準となる音(基準ピッチ)」を脳内に独立して持っているかどうかにあります。相対音感は、直前に提示された音(例えば「これがラ=440Hzです」というガイド音)を手がかりに、音と音の間隔(インターバル)を計算して次の音を導き出す能力です。一方、絶対音感は事前の比較対象を一切必要とせず、単独で鳴った音の周波数を瞬時に「ド」や「ファ#」といった音名に変換して認識します。
Web上の無料コンテンツにおける音当てテスト判定基準は、連続して音が鳴るシステムが主流です。1問目に正解、あるいは基準音を耳にした直後、2問目以降をインターバルの距離感で正解しているケースが多く、これは高度な相対音感の働きに過ぎません。さらに、単音和音聴音判定において、単一のピアノ音は当てられても、不協和音や生活環境のノイズが混ざると途端に判別できなくなる場合、学術的な意味での絶対音感を保持しているとは判断されません。