阿部慎之助が読売ジャイアンツの第20代監督に就任した道筋は、極めて綿密に準備された既定路線でした。2019年の現役引退直後、球団は即座に二軍監督のポストを用意。若手選手たちにプロの厳しさを叩き込む役割を任せました。当時のファームでは、ミスをした選手に罰走を課すなど「昭和の猛練習」を彷彿とさせる指導が話題を呼び、賛否両論を巻き起こしたことも記憶に新しい事実です。
しかし、一軍作戦兼ディフェンスチーフコーチ、そしてヘッドコーチとして原辰徳前監督の隣でベンチワークを学ぶ中で、阿部監督のアプローチには明確な変化が生じました。ただ怒声を浴びせるのではなく、なぜそのプレーがチームの不利益につながるのかを個別ミーティングで論理的に説明する姿勢へとシフトしていったのです。
その育成方針が結実したのが、近年の若手野手や若手投手陣の抜擢です。門脇誠や浅野翔吾といったハングリー精神旺盛な若手を積極的に起用し、守備位置を固定して実戦経験を積ませる方針を採用。一方で、坂本勇人や岡本和真といった実績ある主力選手に対しては、コンディション管理を優先した休養日を設定するなど、柔軟かつシビアな選手起用を徹底しています。「名前や実績だけでスタメンは決めない」という姿勢が、チーム内の競争原理を再燃させました。