明神館を語るうえで絶対に外せないのが、あまりにも有名な大浴場「雪月花」の立ち湯だ。水深120センチメートル。湯船に腰を下ろすのではなく、立ったまま胸まで湯に浸かる。視線の先にはガラス格子もなく、ダイレクトに広がるブナやミズナラの原生林。新緑の眩しい初夏、紅葉に染まる秋、そして雪がしんしんと舞い落ちる冬。湯に身を委ね、ただ静かに目の前の景色を見つめていると、自分と自然の境界線が緩やかに溶けていくような感覚に襲われる。
無色透明で柔らかいアルカリ性単純温泉の湯は、肌にやさしくまとわりつき、体の芯からじわじわと温もりを届ける。立ち湯のほかにも、寝そべりながら夜空を見上げる「空の立ち湯」や、檜の香りに包まれる寝湯など、多様なアプローチで湯浴みの醍醐味を堪能できる。湯上がりには、ほてった身体を吹き抜ける高原の風が心地いい。何時間でもいられる。いや、時間の概念そのものがここでは意味をなさなくなるのだ。