地震が発生した刹那、最も急速に情報が集散するのがX(旧Twitter)を中心とするソーシャルメディアです。テレビの速報テロップが出るよりも早く、タイムラインには「揺れた!」「どこ震源?」「スマホ鳴って心臓止まるかと思った」といった叫びが一斉に投稿されます。
報道記者が現場取材やSNSモニタリングを通じて観測したリアルな実態として、ネット上では発生直後から以下のような現象が同時に巻き起こります。
まず観測されるのは、「揺れの体感報告による震源の特定競争」です。「東京は縦揺れだった」「仙台は長周期で横に長く揺れた」といった断片的な一次情報が飛び交うことで、公的発表よりも前に揺れの性質が可視化される利点があります。一方で、過去の大規模地震時に見られたような「〇〇で火災発生」「ライオンが逃げ出した」といった悪質な悪ふざけや、AI生成画像を用いた偽の倒壊写真など、フェイクニュースの急速な拡散という極めて深刻な副作用も浮き彫りになります。
現場の当事者手記や知恵袋等のコミュニティ投稿を分析すると、人間が突発的な危機に直面した際、「とりあえずSNSを開いて誰かが『揺れた』と言っているのを見て安心しようとする」という奇妙な行動パターンが見られます。これは後述する認知の罠でもありますが、タイムラインで安全を確認しようとする数秒の遅れが、崩落物やガラスの破片から身を守る最大のチャンスを奪っている現実は直視しなければなりません。