海を渡ったメジャーリーグベースボール(MLB)の歴史において、敬遠の概念そのものを破壊した男が存在する。バリー・ボンズだ。2000年代初頭、彼の打席はもはや勝負の体を成していなかった。
満塁の場面で敬遠サインが出され、押し出しで1点を与える光景すら現実のものとなった。満塁策を取って打たれる本塁打(4点)より、確実に1点を与えて次打者を打ち取る方が勝利確率は高いという、常軌を逸した計算が成立していたのだ。一シーズンで120個もの敬遠を記録したボンズの全盛期は、一人の強打者が戦術のセオリーを根底から覆した稀有な時代として語り継がれている。