今永昇太がメジャーの強打者たちを翻弄し続ける最大の要因は、現代の投球データ解析(スタットキャスト)によって可視化された「浮き上がるフォーシーム」と「鋭く落ちるスプリット」のピッチトンネルにあります。MLBの平均球速が年々上昇し、155キロを超える剛速球投手が珍しくない環境において、今永の直球は平均91〜93マイル(約146〜150キロ)と決して速くはありません。
しかし、投球解析の数値を見ると、彼のストレートはボールの回転軸と効率が極めて優れており、重力に逆らって落ちない「縦のホップ成分(Induced Vertical Break)」がメジャー上位数パーセントに位置しています。さらに、マウンドの低い位置からリリースされる独特の投球アングル(Flat VAA:浅い進入角度)によって、打者目線ではボールが浮き上がってくるような錯覚を覚えます。高めのストレートに打者のバットが次々と空を切る光景は、まさにこの物理的特性によるものです。
直球と全く同じ軌道から打者の手元で急速にブレーキがかかり沈むスプリッターの精度が、このストレートの威力を倍増させています。日米のスカウト陣が「頭脳と技術の結晶」と評するように、緻密な配球術と打者の狙いを外すコマンド能力(狙ったコースへ投げ切る力)が、ハイレベルな防御率と高い奪三振率を同時に成立させています。