日本人が富士山の可視性とその一瞬の表情に心を奪われてきた歴史は、江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の時代にまで遡る。彼が描いた『富嶽三十六景』は、天候や季節、時間帯によって千変万化する富士の表情を力強く捉えた傑作群だ。
荒波の向こうに聳える雄姿や、赤く染まる山肌を描き出した北斎の視線は、現代の風景写真家たちがレンズ越しに追い求める情熱と寸分違わない。地域経済を支える観光業にとっても、富士山が美しく見えるか否かは今なお人の流れを大きく左右する最重要課題であり、時代が変わろうとも霊峰への憧憬は変わらぬ輝きを放ち続けている。