冷戦期から1990年代初頭にかけて、外交関係者の間で公然の秘密とされていたのが金日成の首の後ろにあった巨大な腫瘍です。その異様ともいえる外見から、当時は「悪性脳腫瘍の転移」「骨肉腫」「放射線障害による異形成」など、さまざまな憶測や都市伝説が飛び交いました。
しかし、後に旧東ドイツの外交文書や旧ソ連の医療支援チームの記録、さらには金日成の専属医療機関「烽火(ポンファ)診療所」関係者の脱北証言によって、こぶの正体は良性の「脂肪腫(リポーマ)」あるいは結合組織が線維化した良性腫瘍であったことがほぼ特定されています。
脂肪腫自体は皮下に脂肪細胞が増殖してできる一般的な良性腫瘍であり、初期段階であれば命に関わる病変ではありません。しかし金日成の場合、青年期から壮年期にかけて発生した腫瘍を長年放置した結果、組織が石灰化を伴いながら異常増殖を続け、硬化・巨大化していったと考えられています。