イェレナは、マーレに侵略された小国の出身者で構成される反マーレ派義勇兵の筆頭としてパラディ島へ接触してきました。自国を蹂躙したマーレを激しく憎み、エルディアの復権のために命を懸ける忠義の士――表向きはそう信じられていたのです。
しかし、その出自は巧妙に仕組まれた偽りの物語でした。マーレの戦士である車力の巨人・ピークの調査によって、彼女は被差別小国の出身などではなく、ごく普通のマーレ人家庭に生まれた一般人であった事実が暴かれます。
彼女を突き動かしていた動機は、祖国解放のような高尚な怨恨ではありませんでした。「平凡で退屈な人生に耐えられない」「歴史を動かす偉大な神話の一部になりたい」という、肥大化した自己顕示欲とロマンチシズムこそが彼女の原動力だったのです。劇的な人生を手に入れるため、自らの出自を塗り替えて戦乱の渦中へ飛び込んでいった狂気こそ、イェレナという人間の本質と言えます。