イェレナが行動を共にした最大の原動力、それはジーク・イェーガーに対する絶対的な心酔でした。彼女にとってジークは単なる上官や盟友ではなく、文字通りの「神」でした。戦場で巨人の力を振るうジークの神々しい姿を目撃した瞬間から、彼女の魂は彼に完全に支配されていたのです。
彼女が共有した真の目的は「エルディア人安楽死計画」の完遂でした。始祖の巨人の力を用いてすべてのユミルの民から生殖能力を奪い、新たな子孫を残せなくすることで、数十年かけてエルディア人をこの世から自然消滅させるという恐るべき計画です。
常人であれば忌避するこの絶滅計画を、イェレナは「幾千年にわたる巨人の呪いから世界を解放する崇高な救済」として全肯定しました。兵団の上層部に脊髄液入りのワインを飲ませて無力化し、反対勢力を躊躇なく粛清していく手口には、一切の躊躇がありませんでした。
彼女が真に求めていたのは、平和そのものではありません。「神であるジークと共に、人類の歴史を根本から塗り替える奇跡の瞬間に立ち会うこと」、すなわち歴史の特等席に座ることこそが彼女の至高の快楽だったのです。他者の生殺与奪を握る立場に身を置くことで、自らの空虚な自尊心を満たそうとする危険なカルト的信奉の構造がここにありました。